子どもの非認知的能力を伸ばせる先生が大事な理由
最近よく耳にする「非認知的能力」という言葉。
テストやIQでは測れない能力を指して使われます。
例えば、勉強のやる気や対人関係力など数値ではなかなか表しにくい能力です。
非認知的能力が大事とよく言われますが、なぜ大事なのかはわからないことが多いです。
教育心理学でも、非認知的能力の研究は盛んに行われていて、非認知的能力が子どもの行動や将来にどのように関係するのかがわかりつつあります。
今回は、そんな非認知的能力を伸ばせる教師がなぜ大事なのかについて、教育心理学の実際の研究をもとにお話しします。
目次
①非認知的能力は、テストの成績よりも様々な能力に大きく影響する!
非認知的能力の影響を多方面にわたって研究したのが、アメリカのノースウェスタン大学所属のJackson(2012)の研究です。
彼は、40万人以上の中学三年生のデータを活用し、非認知的能力が子どもの行動や将来にどのように影響するのかを調べています。
彼の研究では、非認知的能力を「適応力・自制心・モチベーションなどテストで表せない能力」と定義しています。
特に、非認知的能力の具体的な項目として、「欠席率」と「停学の有無」を主な項目として算出しています。
これらの非認知的能力の項目と数学テストの成績がどれほど子どもの行動に影響するのかを調べた結果が以下の図になります。
縦軸が、それぞれの項目への影響力。
横軸が、「退学したか」「卒業したか」「四年生大学に進学する意志の強さ」をそれぞれ表します。
青が数学テストの成績の影響力で、赤が非認知的能力の影響力です。
すると、どの項目でも、数学テストの成績より非認知的能力の影響力の方が大きいことがわかります。
このように、テストよりも非認知的能力を伸ばせる方が、学校での行動も良くなるのです。
②非認知的能力は、テストの成績よりも将来的な能力に大きく影響する!
次に、学校生活だけではなく、社会人になった時の影響も調べられています。
その結果が以下の図です。
将来への影響は、主に25歳時点のでの「仕事の有無」と「収入の多さ」についてみています。
すると、数学テストの成績よりも、仕事の有無での収入の多さでも非認知的能力の方が影響力が大きいことがわかります。
他にも、逮捕歴も調べられています。
数学テストの成績と逮捕歴とは、関係があるとは言えませんでした。
しかし、非認知的能力が高いと、逮捕歴が少なくなる傾向が見られています。
このように、非認知的能力は、現在や近くの将来だけではなく、10年以上も先の行動にも影響する可能性があります。
なので、先生は子どもの非認知的能力を伸ばせると良いと思われます。
では、どのような先生が非認知的能力を伸ばせるのか?
③教育歴が長くても子どもの非認知的能力が伸ばせるとは限らない⁉
最後に、衝撃的な研究結果をご紹介します。
実は、先生の教育歴は非認知的能力を伸ばす力と関係があるとは言えないという結果です。
それを示したのが以下の図になります。
縦軸は、先生がどれだけそれぞれの能力を伸ばせるのかを示しています。
横軸は、先生の教育歴です。
右に行くほど教育歴が長いことが示されています。
すると、上の英語テストの成績は、右肩上がりになっており、教育歴が長い先生の方が伸ばせることがわかります。
しかし、下の非認知的能力は、平らかむしろ右下がりの傾向であり、教育歴が長い先生でも伸ばせるのかはわからないと思われます。
非認知的能力は伸ばす方法がまだまだ確立されておらず、伸ばすには教育歴とは別の能力が必要なのかもしれません。
④まとめ
以上をまとめると
- 非認知的能力を伸ばせば、数学テストの成績よりも、子どもの学校での行動が良くなる。
- 非認知的能力を伸ばせば、数学テストの成績よりも、子どもの10年以上も先の将来的な行動も良くなる。
- 非認知的能力は、教育歴が長い教師でも伸ばせるとは限らない。
非認知的能力の伸ばし方は、今後取り上げたいと思いますが、教育歴が長くても伸ばせるとは限らないのが難しいところです。
今回の非認知的能力は、出席率や停学の有無を主な指標にしていましたが、子どもが授業に出席して休まないようになるには、やはり好きな先生がいることが良いと思われます。
学校に行きたくなりますし、授業も聞きたくなり、好きな先生のためなら悪いこともしなくなります。
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学校の成績だけではなく、好きな先生との交流から非認知的能力を伸ばし、将来有望な人になれる近道になります。
参考文献
C. Kirabo Jackson. (2012). Non-Cognitive Ability, Test Scores, and Teacher Quality: Evidence from 9th Grade Teachers in North Carolina. NBER WORKING PAPER SERIES, WORKING PAPER 18624.