授業のノートを手書きでとる教育心理学的な効果!
授業の板書を手書きでノートに取ることは、さも当然かのように言われています。
先生が黒板に書いた板書を、紙のノートに手書きで取っていく。
自分なりにカラーペンでカラフルにしたり、線を引いて強調したり…。
受験では、東京大学や京都大学合格者のノートがきれいだと話題になります。
しかし、一人一台パソコンを持つ時代で、果たして手書きでノートを取る意味はあるのでしょうか?
スマートフォンの発展から、「写真を残すだけでよくない?」というお子さんもいらっしゃるでしょう。
教育心理学の視点からすると、わざわざ手書きでノートを取ることでプラスになることがたくさんあります。
なので、今回は実際の研究をもとに手書きでノートを取る意味についてみていきます。
目次
①手書きでノートを取る方がパソコンでノートを取るよりも頭に残りやすい。
皆さんにとってノートを取る意味とは何でしょうか?
様々な意見があると思いますが、「学習内容を頭に残し、忘れても後から見返せるようにするため」というのが主な理由です。
しかし、それでは写真で残したり、パソコンに打って残したりしてもいいはずです。
これでは手書きの意味がありません。
そんな疑問を抱いた人は数多くいると思います。
実際に、教育心理学でも、同じ授業内容を手書きでノートを取った場合とパソコンでノートを取った場合とで、どちらの方がより内容が記憶に残っているのかを比較した研究は複数あります。
その中でもプリンストン大学のMuellerとOppenheimerが2014年に発表した研究では、手書きでノートを取ることの優位性を物語っています。
彼らは、有名人が世界に向かってプレゼンをするTEDトークの動画を使った実験をしました。
動画を見せながら、一方の群では手書きでノートを取らせ、もう一方の群ではパソコンでノートを取らせました。
その後、どれだけ内容を覚えていたのかをテストしました。
そのノートの特徴も分析しています。
すると結果は以下のようになりました。
この図の縦軸が、テストの成績です。
点数がプラスだとそのやり方での成績が高く、点数がマイナスだとそのやり方での成績が低いことを示します。
薄いねずみ色がパソコンでノートを取った群。
濃いねずみ色が手書きでノートを取った群です。
グラフの左半分の事実の記憶とは、「およそ西暦何年にインダス文明は存在したか?」のような問題の成績です。
例えば「大阪府ー大阪市」や「1600年に関ヶ原の戦いがあった」のように名前や年号など事実を暗記するような能力を測定している項目が事実の記憶です。つまり、基礎知識が頭に残っているのかをテストする項目です。
グラフの右半分の概念の理解とは、「日本とスイスでは経済的平等を達成するためのアプローチがどう違うのか?」のような問題の成績です。
例えば「喉頭蓋(こうとうがい)が機能しなくなるとどうなるか?」のように、単に「喉頭蓋(こうとうがい)」という体の機能を暗記的に覚えていても答えられないような能力を測定している項目が概念の理解です。つまり、学習内容の応用ができるかをテストする項目です。
すると、図より事実の記憶はパソコンでも手書きでも成績は変わりませんが、概念の理解は手書きの方が成績は良いです。
他にも両群のノートを分析すると、手書きよりもパソコンのノートの方が内容のかぶりも多く、かつ文字量も多いという結果です。
また、手書きのノートの場合、文字量が少なくまとまったノートの人ほど成績が良いという結果も出ています。
このように手書きの場合、パソコンの場合よりも、概念の理解が促せます。
手書きは、パソコンのように単に先生の言ったことをタイピングするのではなく、考えながら自分なりの理解をノートに書いていきます。
この「考えながら」が、概念の理解度に影響しているかもしれません。
②手書きでノートを取った場合、ノートを見返すことで文字情報の復習がより効果的になる。
次に、手書きのノートの場合、パソコンのノートよりも、ノートを見返すことで生まれる学習効果が高いといわれています。
それを示唆したのが、レーゲンスブルク大学・ネブラスカ大学・オハイオ大学共同のLuoらが発表した2018年の研究です。
彼らは、実験参加者に統計学の授業を受けさせました。
その時、パソコンでノートを取った群と手書きでノートを取った群に分けています。
さらに、その二つの群にノートの見返しをさせたグループと見返しをさせないグループに分けています。
この二つの群(パソコン or 手書き)と、グループ(見返しあり or なし)の四つでテスト成績に差があるかを見ています。
以下は結果の一部です。
縦軸が、図ではなく文字情報の成績を示しています。
青の点線がパソコンでノートを取った群、赤の傍線が手書きでノートを取った群です。
左側がノートの見返しなし、右側がノートの見返しありです。
すると、グラフの左側のノートの見返しなしの場合ではノートの取り方によってそれほど差はありません。
しかし、見返しありの場合だと、手書きの方がパソコンよりもテキスト情報の成績は高いことがわかります。
このように、手書きのノートはパソコンのノートよりも見返すことによる学習効果が高いことがわかります。
手書きのノートの方がノートに書かれている情報以外のことも思い出せそうですよね。
③まとめ
以上をまとめると、
- 手書きのノートはパソコンのノートよりも概念の理解度が高い。
- パソコンの方が手書きのノートよりも文字量と内容のかぶりが多い。
- 手書きで文字量が少なくすっきりまとめられたノートを書く人ほど成績が良い。
- 手書きのノートの方がパソコンよりも見返すことでテキスト情報の学習効果が高まる。
手書きでノートを取ることは一見非効率に思えますが、学習効果が高いです。
そして、同じ手書きでも文字量が少なくすっきりまとめられる人ほど成績は高い。
これは、ノートの取り方が関係していると思います。
その子にあったノートの取り方は手書きであれば余計に大切です。
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参考文献
Luo et al. (2018). Laptop versus longhand note taking: effects on lecture notes and achievement. Instructional Science, 46, 947-971.
Mueller & Oppenheimer(2014). The Pen Is Mighter Than the Keyboard: Advantages of Longhand Over Laptop. Psychological Science, 25(6), 1159-1168.