親の声掛け一つで数学の成績が上がる⁉
親御さまの声掛けは、子どもの成績に関わります。
幼い時の子どものおままごとを眺めていると、家で親が使う言葉をそのまま真似しているシーンによく出会います。
そのため、家庭での親の言葉はそのまま子どもの言葉になりうるのです。
前回の記事では、そんな親の声掛けの違いで、子どもが自分自身に語り掛ける言葉が変わり、授業後に感じるネガティブ感情の度合いが異なることをお話しました。
授業後のネガティブ感情は、勉強へのやる気にもつながります。
そのため、声掛けは子どもの勉強への態度を左右するのです。
今回は、そんな声掛け一つで算数や数学の成績も左右することを、教育心理学の観点からお話します。
目次
①どんな親の声掛けが子どもの数学の成績を左右するのか?
親の声掛け一つで、勉強への態度どころか成績も左右すると言われています。
それを示したのが、オランダのユトレヒト大学・ライデン大学校・アムステルダム大学と
イギリスのサウサンプトン大学の共同でThomaesらが2020年に発表した研究です。
彼らは、9歳~13歳の子どもに二つの声掛けを聞かせて、数学の成績が上がることを示しました。
彼らが注目した声掛けは二つです。
一つ目は、努力的な声掛けで、「ベストを尽くす」と努力に重きを置いて自分自身に言い聞かせる声掛けです。
二つ目は、能力的な声掛けで、「これが得意だ」と”できる”ことに重きを置いて自分自身に言い聞かせる声掛けです。
Thomaesら(2020)は、最初に算数と数学のテストをして、児童・生徒の能力を測ります。
次に、子どもたちを「努力的な声掛け」「能力的な声掛け」「声掛けなし」の三つの群に分けて、それぞれ自分自身に声掛けの言葉を言い聞かせます。
最後に、もう一度算数と数学のテストをさせて、声掛けの効果を確かめました。
②努力的な声掛けが子どもの算数と数学の成績を上げる。
実験の結果はどうなったのでしょうか?
それをまとめたのが以下の図です。
この図のように、努力的な声掛けをした子供は、算数と数学の成績が一回目より伸びました。
しかし、能力的な声掛けと声掛けなしの子どもは、一回目と比べて算数と数学の成績は伸びませんでした。
そのため、同じ声掛けでも努力的な声掛けが、勉強成績向上に効果的です。
他方、声掛けがどのような子どもに特に効果的かを詳しく分析したところ、算数や数学に苦手意識を持っている子どもほど努力的な声掛けで成績が伸びるという結果でした。
つまり、「ベストを尽くそう」とする努力的な声掛けによって、算数と数学に苦手意識を持っている子どもの成績が上がりやすいのです。
他の教科でどうなのか、得意な子どもの成績を上げる他の声掛けがあるのか。
いろいろ気になりますが、今後の研究が待たれるところです。
③まとめ
まとめると、
- 声掛けには「”ベストを尽くす”という努力的な声掛け」と「”これが得意だ”という能力的な声掛け」の二種類がある。
- 子どもの算数や数学の成績には「努力的な声掛け」が有効。
- 努力的な声掛けの効果は、算数や数学に苦手意識を持つ子供に特に効果的。
親御さまの声掛け一つで、子どもの数学や算数の成績が上がる可能性があります。
特に、算数や数学に苦手意識を持っている子どもほど声掛けで一部解決するかもしれません。
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参考文献
Thomaesら(2020). Effort Self-Talk Benefits the Mathematics Performance of Children With Negative Competence Beliefs. Chil Development, 91(6), 2211-2220.